M&Aのコンサルティング会社では、取引の計画から実行までのサポート、リスクの最小化やシナジー効果の最大化までを行います。
本記事では、M&Aにおけるコンサルティングサービスの内容やコンサルタントを活用する際のメリットについて詳しく解説していきます。
M&Aコンサルティングとは
M&Aにおけるコンサルティングでは、企業の合併や買収に関する専門的な支援を行います。取引の計画から実行や評価、そして統合プロセスまで幅広く関与。ここでは、M&Aコンサルティングの基礎知識を解説します。
M&Aコンサルティングの定義
M&Aのコンサルタントは、企業の戦略的な目標に基づいて、最適な取引先の選定や交渉の進行、リスク評価などを行います。そして、企業がM&Aを通じて成長を実現できるように導きます。
M&Aコンサルティングの目的
M&Aコンサルティングの主な目的は、企業が成長戦略を実現する最適な手段を提供することです。企業の買収や合併を通じて市場シェアの拡大や新規事業の開拓を図り、競争力を高めます。
また、M&Aを通じて得られるシナジー効果を最大化し、コスト削減や収益の向上を目指すことも重要な目的の一つです。さらに、M&Aコンサルタントは、取引に伴うリスクを最小限に抑えるための戦略を策定し、企業が直面するさまざまな課題をサポートします。
M&Aコンサルタントの主な業務
M&Aコンサルタントの主な業務は、企業の合併や買収に関する幅広いサポートを提供することです。具体的には、以下の業務があります。
- 取引の戦略立案
- ターゲット企業の選定
- 売り手や買い手との交渉
- デューデリジェンスの実施
- 契約締結に関する業務
- 統合支援
これらの業務を通じて、コンサルタントは企業がM&Aを成功させるサポートを行います。
特に、デューデリジェンスでは対象企業の財務状況や業務運営の詳細を徹底的に調査し、リスクを評価します。また、契約締結後には、統合プロセスを支援し、シナジー効果を最大化するための戦略を策定することも可能です。
M&Aコンサルティングのプロセス
M&Aコンサルティングは、企業の合併や買収を成功に導くために、いくつかの重要なプロセスを経て進行します。詳しくみていきましょう。
戦略立案フェーズ
M&Aコンサルティングにおける戦略立案フェーズでは、企業のビジョンや目標を明確にし、それに基づいたM&A戦略を策定します。
業界のトレンドや競合分析を行い、どのような企業との統合が最も効果的かを検討。また、ターゲット企業の選定に向けた基準を設定し、シナジー効果を最大化するための方針を立てていきます。
さらに、戦略立案フェーズではリスク評価も重要です。市場環境や法規制の変化を考慮して潜在的なリスクを洗い出すことで、より安全なM&Aを実現します。
ターゲットの選定と交渉
このプロセスでは、企業のビジョンや戦略に合致した候補企業をリストアップ。そして、企業の財務状況や市場ポジション、シナジー効果を評価します。
コンサルタントは、業界のトレンドや競合分析を通じて、最適なターゲットを見極める役割を担います。選定が完了した後は、交渉フェーズに移ります。
この段階では、ターゲット企業との関係構築が重要です。コンサルタントは、双方の利害を調整し、円滑なコミュニケーションを図ることで、合意形成を目指します。
交渉は単なる価格交渉にとどまらず、契約条件や将来のビジョンについても話し合う重要なプロセスです。
デューデリジェンスの実施
デューデリジェンスとは、買収対象企業の財務状況、法務リスク、業務運営、そして市場環境など、さまざまな側面を詳細に調査することです。
目的は、潜在的なリスクを特定し、取引の妥当性を評価することです。デューデリジェンスの実施には、専門的な知識と経験が求められます。コンサルタントは、財務諸表の分析や契約書の精査を行い、企業の実態を把握。
また、競合他社との比較や市場動向の分析も行い、買収後のシナジー効果を見込むためのデータを提供します。
契約締結と統合支援
M&Aプロセスの最終段階である契約締結と統合支援は、取引の成功を確実にするために非常に重要です。契約締結では、買収条件や価格、支払い方法などの詳細を明確にし、双方が合意に達することが求められます。
この段階では、法務面での確認やリスク評価が欠かせません。M&Aコンサルタントは、これらのプロセスを円滑に進めるための専門知識を提供し、契約書の作成や交渉をサポートします。
契約が締結された後は、統合支援が始まります。これは買収した企業と買収元企業の文化や業務プロセスを統合していくステップです。
M&Aコンサルタントは、統合計画の策定や実行支援を行い、従業員の意識改革やコミュニケーションの促進を図ります。
M&Aコンサルティングの重要性
ここでは、M&Aコンサルティングの重要性について解説します。
企業価値向上への貢献
M&Aコンサルティングは、企業の成長戦略において重要な役割を果たします。特に、M&Aを通じて企業価値を向上させるための戦略を描きます。
コンサルタントは、ターゲット企業の選定から交渉、統合プロセスに至るまで、各段階で専門的な知見を提供するのです。
また、M&Aを成功させるためには、財務的な分析や市場動向の把握が不可欠です。コンサルタントは、これらの情報を基に、企業がどのように価値を創出できるかを明確にし、具体的な施策を提案します。
例えば、大企業が中小企業の事業承継の受け皿となり、長年培ってきたブランドや技術を永続的に受け継ぐことや、大企業がスタートアップM&Aによりスタートアップや成長企業を買収して隣接する新たな成長市場に参入するなど、買い手・売り手双方の企業価値向上に繋がるか、という視点が重要です。
リスク管理とデューデリジェンス
M&Aにおいてリスク管理は極めて重要です。企業がM&Aを進める際には、対象企業の財務状況や業務運営、法的リスクなどを詳細に分析する必要があります。
このプロセスを支えるのがデューデリジェンスです。デューデリジェンスとは、買収対象企業の情報を徹底的に調査し、潜在的なリスクや問題点を明らかにする作業です。
デューデリジェンスを通じて、企業は取引の妥当性を評価し、適切な意思決定を行います。これにより予期せぬトラブルを未然に防ぎ、M&A後の統合プロセスをスムーズに進めます。
戦略的な成長の実現
M&Aによって企業が新たな市場へ進出したり、競争力を高めるには、適切なターゲット企業の選定や効果的な統合プロセスが不可欠です。
また、M&Aを通じて得られる新たな技術やノウハウは、企業の成長を加速させる要素となります。コンサルタントは、業界のトレンドや競合分析を行い、企業がどのように成長戦略を構築すべきかを示唆します。
M&Aコンサルタントの役割と専門性
M&Aのコンサルタントは、企業の合併や買収において重要な役割を果たします。ここでは、その役割や専門性について解説します。
財務・会計の専門知識
企業の買収や合併においては、対象企業の財務状況を正確に把握することが不可欠です。これにより、適正な評価額を算出し、取引の妥当性を判断できます。
また、財務諸表の分析を通じて、潜在的なリスクや問題点を早期に発見することも可能です。
さらに、M&Aにおける財務戦略の立案や資金調達のアドバイスもコンサルタントの重要な役割です。特に、複雑な取引構造や資本政策を理解し、最適な資金調達方法を提案する能力は、企業の成長を支える上で欠かせません。
法務・税務のサポート
M&Aコンサルタントは、取引に関連する法律や規制を熟知しています。これにより契約書の作成やレビューを通じて、企業が法的リスクを回避できるよう支援します。
また、税務面でも、取引の構造が企業に与える影響を分析して最適な税務戦略を提案。これにより、企業は不必要な税負担を軽減し、M&Aの成功に向けた基盤を築くことができます。
業界動向の分析と洞察
M&Aコンサルタントは、クライアント企業が市場での競争力を維持して成長を遂げるための、重要な情報を提供します。
業界のトレンドや競合他社の動向、技術革新の影響などを詳細に調査し、クライアントの戦略立案に役立てます。これにより企業は自社の強みや弱みを把握し、適切なM&A戦略を策定可能です。
また、業界の変化に迅速に対応するためには、定期的な市場分析が不可欠です。M&Aコンサルタントは、最新のデータや情報を基にした分析を行い、クライアントに対して具体的なアドバイスを提供します。
買い手や売り手の属性や内部事情の経験・理解
買い手は、伝統的な大企業、新興上場企業、中堅・中小企業、大型の資金調達を実行したスタートアップ、PEファンド、海外事業会社など、日本でもようやく多様化が進んでいます。
売り手は、業歴が長い中小企業や中堅企業、PEファンドや大企業の子会社売却などはもちろん、ベンチャーキャピタルから資金調達の経験があるスタートアップや、ソリッドベンチャーなど、多様化が進んでいます。
これらそれぞれの特性や内部事情に関するインテリジェンス情報を収集・分析できることはM&Aコンサルタントにとって重要です。
M&Aコンサルタントの人材の傾向
一般的に、M&A仲介会社やM&Aマッチング・プラットフォームは大量のマッチングを高速で行う営業力に強い人材を集める傾向がある一方、FA専門会社はコンサルティング力、インテリジェンス情報の収集・分析や人脈に長けた人材を集める傾向があります。
適切なM&Aコンサルタントの選び方
ここでは、適切なM&Aコンサルタントの選び方を解説します。
実績と経験が自社と関連しているか
M&Aのコンサルタントを選ぶ際に最も重要なポイントの一つは、そのコンサルタントの実績と経験が自社の業界やビジネスモデルに関連しているかどうかです。
特定の業界に特化した知識や経験を持つコンサルタントは、業界特有の課題やトレンドを理解しているため、より効果的なアドバイスを提供できます。
例えば、製造業の企業がM&Aを検討する場合、製造業における過去の成功事例や失敗事例を知っているコンサルタントは、より具体的な戦略を提案できるでしょう。
また、コンサルタントの過去のプロジェクトやクライアントの成功事例を確認することも重要です。これにより、コンサルタントがどのような成果を上げてきたのか、そしてその成果が自社の目指す方向性と一致しているかを判断できます。
専門性と提供サービスに過不足はないか
M&Aコンサルタントを選ぶ際には、その専門性と提供するサービスが自社のニーズに合致しているかを確認することが重要です。
まず、コンサルタントが持つ専門知識や経験が、自社の業界や取引の特性に関連しているかを評価しましょう。特定の業界に特化した知識を持つコンサルタントは、より的確なアドバイスを提供できる可能性が高くなります。
次に、提供されるサービスの内容を詳細に確認することも欠かせません。M&Aプロセスには、戦略立案、ターゲット選定、デューデリジェンス、契約締結、統合支援など多岐にわたる業務が含まれます。
これらの各フェーズにおいて、コンサルタントがどのようなサポートを行うのか、またその範囲が自社の期待に応えられるかを見極めることが必要です。
最後に、過不足のないサービスを提供できるかどうかも重要なポイントです。必要なサポートが不足している場合、プロジェクトがスムーズに進行しない可能性がありますし、逆に過剰なサービスが提供される場合はコストが無駄になることもあります。
コミュニケーション能力は十分か
M&Aコンサルタントを選ぶ際に重要な要素の一つが、コミュニケーション能力です。M&Aは多くの関係者が関与する複雑なプロセスであり、円滑な情報共有や意見交換が不可欠です。
コンサルタントがクライアントのニーズを正確に理解し、適切なアドバイスを提供するためには、優れたコミュニケーションスキルが求められます。
また、交渉の場面でもコミュニケーション能力は重要です。相手方との交渉を成功させるためには、明確な意見表明や柔軟な対応が必要です。
さらに、チーム内での協力や調整も求められるため、対人スキルが高いコンサルタントを選ぶことが、M&Aの成功に繋がります。
また、以下の仲介会社に関する留意事項についてもM＆A仲介会社やFA専門会社を比較検討する際にあわせてお役立てください。
参考：中小Ｍ＆Ａガイドライン改訂（第3版） に関する概要資料 | 経済産業省
M&Aコンサルティングの費用構造
M&Aコンサルティングの費用構造は、一般的に複数の要素から成り立っています。料金体系や報酬の違いなどを詳しく解説します。
一般的な料金体系
基本的な料金としては、コンサルタントの時間単価やプロジェクト単位での固定料金が挙げられます。これに加えて、プロジェクトの規模や複雑さに応じて、追加の費用が発生することもあります。さらに、成功報酬型の料金体系も一般的です。
成功報酬と固定報酬の違い
成功報酬は、取引が成立した際に発生する報酬であり、コンサルタントの成果に基づいて支払われます。そのためコンサルタントはクライアントの目標達成に向けて全力を尽くす可能性が高いです。
一方で、固定報酬はプロジェクトの開始時に合意された金額が支払われるもので、取引の成否に関わらず発生します。固定報酬は、予算管理がしやすい一方で、コンサルタントのモチベーションが低くなる可能性があります。
利益相反に関する禁止事項
M&A仲介会社については、大手の上場しているM&A仲介会社も中小規模の業者も、いずれも以下のような利益相反行為について中小企業庁より注意喚起がなされており、留意が必要です。
いずれも買い手にとっては有利な方向での利益相反行為にて、売り手は特に警戒が必要です。売り手向けのFA専門会社では同様の利益相反行為は構造的に生じないと言われており、何故なのか、違いや特徴を、十分に比較検討することが重要です。
（典型的な事例）
・交渉の途中で、買い手からM&A仲介会社が追加で手数料を取得し、その買い手に便宜を図る行為（売り手に不利益になるリスクが高い）
・M&A仲介会社がリピーターとなる買い手を優遇し、便宜を図る行為（リピーターの買い手を優先的にマッチングし、他により良い買い手は存在しないと説明しながら不当に安い売却価格で売り手を説得しようとする、など）
参考：中小Ｍ＆Ａガイドライン改訂（第3版） に関する概要資料 | 経済産業省の9頁目
M&Aコンサルティングに関するよくある質問
ここでは、M&Aコンサルティングに関するよくある質問と回答を解説します。
M&Aコンサルティングにかかる期間は？
M&Aコンサルティングにかかる期間は、案件の規模や複雑さによって大きく異なります。一般的には、戦略立案から契約締結まで数ヶ月から1年程度が目安とされています。
特に、デューデリジェンスや交渉プロセスは長引くことが多いため、早めの準備と計画が重要です。また、企業の内部状況や市場環境も影響を与えるため、柔軟な対応が求められます。
M&Aコンサルティングは必ず必要？
M&Aのコンサルティングは、必ずしも全ての企業にとって必要ではありません。特に、M&Aの経験が豊富な企業や内部に専門知識を持つチームがある場合は、コンサルティングが不要かもしれません。
しかし、初めてM&Aを行う企業や、複雑な取引を検討している場合には、専門的な知識と経験を持つコンサルタントのサポートが大いに役立つでしょう。
M&Aコンサルタントの役割は？
取引の戦略立案から実行までをサポートし、リスクの評価やシナジー効果の分析までも行います。そのため取引の成功確立を上げる役割を担います。
まとめ
本記事では、M&Aのコンサルティング会社について、基本概念や提供されるサービス、コンサルタントを活用するメリットについて詳しく解説しました。
M&Aのコンサルティング会社は、企業の成長戦略を支える重要なパートナーといえます。取引の計画から実行までの一連のプロセスをサポートし、リスクを最小限に抑えつつシナジー効果を最大化。
企業がM&Aを成功させるためには、適切なコンサルタントの選定が不可欠です。実績や専門性、コミュニケーション能力を考慮し、自社に最適なパートナーを見つけることが重要です。
