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M&Aのリスクとは?売り手・買い手それぞれの注意点や対策方法を解説

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M&A(合併・買収)は、企業の成長や事業拡大において有効な手段ですが、同時に多くのリスクも伴います。

売り手と買い手の双方にとって、経営戦略や財務、法務、組織・人事、市場変化といったさまざまなリスクが存在し、それらを適切に管理しなければM&Aの成功は難しいです。

本記事では、M&Aにおける主要なリスクの種類や実際に起こりやすい問題について詳しく解説するとともに、リスクを回避する方法についてもご紹介します。

リスクを理解した上で適切な意思決定ができるようサポートしていきます。

M&Aのリスク5種類(売り手と買い手それぞれ紹介)

M&Aにおけるリスクは多岐にわたりますが、特に売り手と買い手それぞれが注意すべきリスクを理解することが重要です。

  1. 経営戦略におけるリスク
  2. 財務に関するリスク
  3. 法務リスク
  4. 組織・人事的なリスク
  5. 市場変化のリスク

リスクを理解し、適切に対策を講じることがM&Aの成功に繋がります。

 

経営戦略におけるリスク

M&Aにおける経営戦略のリスクは、売り手と買い手の双方にとって重要な要素です。

売り手側

企業の価値を最大化する戦略が不十分の場合、適正価格での売却が困難

買い手側

戦略が不明確だった場合、期待したシナジー効果を得られない

売り手側では、M&Aを通じて企業の価値を最大化するための戦略が不十分であると、企業の魅力が低下し、適正価格での売却が難しくなります。

また、売却後の経営方針やビジョンが明確でない場合、買い手にとっても不安要素となり、取引が成立しないリスクが高まります。

一方、買い手側では戦略が不明確なほか、実行可能性が低い場合、期待したシナジー効果を得られない可能性があります。

特に、買収後の統合プロセスにおいて、経営戦略が適切に実行されないと企業全体のパフォーマンスに悪影響を及ぼすことがあるため、注意が必要です。

経営戦略におけるリスクは多岐にわたり、M&Aの成功には慎重な計画と実行が求められます。

財務に関するリスク

M&Aでは、財務状況の精査が重要となり、適切な分析を行わないと、買収後の資金繰りや経営計画に大きな影響を及ぼす可能性があります。

売り手側

企業価値が正当に評価されず、資金計画が狂う

買い手側

過大な負債を引き継ぐ可能性

売り手側のリスクとしては売却価格の設定が適切でない場合、企業価値が正当に評価されず、資金計画が狂う可能性があります。

また、簿外債務や税務上の問題が発覚すると契約後のトラブルにつながることもあるため、財務状況の透明性を確保し、正確な企業価値を把握することが重要です。

買い手側としては、財務リスクとして過大な負債を引き継ぐ可能性が挙げられます。買収後に予想外の債務やキャッシュフローの問題が発覚すると、経営の安定性が損なわれる可能性があるため注意が必要です。

法務リスク

M&Aにおいて、法務リスクの管理は不可欠です。契約や規制、労務関係など、多岐にわたる法的要因が取引の成否を左右します。

売り手側

契約上の瑕疵や未解決の訴訟があると、買い手との交渉が難航

買い手側

買収後に法的問題が発覚すると、企業価値の低下や訴訟につながる

M&Aに際し、契約上の瑕疵や未解決の訴訟があると、交渉が難航する場合があるのが売り手のリスクです。

また、従業員の雇用契約や知的財産権の管理が不十分な場合、売却後のトラブルにつながるリスクもあるため、事前に契約内容を精査し、問題点を解消することが重要です。

次に、買い手のリスクとして買収後に想定外の法的問題が発覚すると、企業価値の低下や訴訟の増大につながる可能性があるのを覚えておきましょう。

特に、取引先との契約条件、労務問題、許認可の引き継ぎに関する確認を怠ると事業運営に支障をきたすことがあるため、買収前のデューデリジェンスを徹底し、リスクの最小化を図ることが重要です。

組織・人事的なリスク

M&Aでは、経営統合後の組織運営や人事管理が大きな課題となります。企業文化の違いや労働環境の変化によって、従業員の士気や生産性に影響を与えることも少なくないため、事前に注意しておくと安心です。

売り手側

離職が増える可能性

買い手側

内の混乱や業務効率の低下を招く

M&Aによる経営統合が発表されると、従業員の不安が高まり、離職が増える可能性が高まるのが売り手側のリスクです。特に、待遇や雇用の継続に関する不透明さが残ると、優秀な人材の流出につながることもあります。

売却前に従業員への説明を十分に行い、円滑な移行を進めることが重要です。

一方、買収後、組織の統合がスムーズに進まない場合、社内の混乱や業務効率の低下を招く可能性があるのが買い手のリスクです。

経営方針や社風の違いによって、従業員の意識にズレが生じることもあり、適切な人事戦略が求められます。

特に、幹部やキーパーソンの流出は事業継続に大きな影響を与えるため、統合プロセスの設計を慎重に進めることが必要です。

市場変化のリスク

M&Aでは、経営環境の変化を的確に捉えることが重要です。市場の動向や競争環境が急激に変化すると、M&Aの目的や戦略が想定通りに進まないリスクが生じます。

売り手側

売却価格が適正であったかの再評価

買い手側

買収後に市場環境が変わり、想定外の成長戦略になる

売り手のリスクとして、売却後に市場環境が大きく変化すると、売却価格が適正であったか再評価されることがあります。特に、業界のトレンドが急速に変わる場合、想定以上に低い評価での売却となる可能性もあるので注意が必要です。

一方、買い手としては買収後に市場環境が変わり、想定していた成長戦略が実現できなくなるリスクがあります。特に競争が激化したり、業界の規制が変更されたりすると、計画通りの収益が見込めなくなる可能性があります。

また、消費者のニーズや技術革新のスピードに対応できないと、投資回収が困難になることも考えられるため、変化に強い経営体制を構築することが必要です。


M&Aで起こりがちなリスク(売り手と買い手それぞれ紹介)

M&Aにおいては、売り手と買い手の双方が直面する特有のリスクが存在します。

  1. 適正価格ではないM&Aを実行
  2. PMIに失敗する
  3. 情報漏洩が起きる
  4. 過去の違法行為やコンプラ違反が後から発覚する
  5. 敵対的買収が実行される

リスクを理解し、適切な対策を講じることがM&Aの成功に向けた第一歩となります。


適正価格ではないM&Aを実行してしまう

M&Aにおいて、適正価格の判断は極めて重要です。売り手と買い手の双方が合意する価格が企業の実際の価値を反映していない場合、さまざまな問題が生じる可能性があります。

特に、買い手が過大評価した価格でM&Aを実行してしまうと、将来的な利益を圧迫し、投資回収が困難になることがあります。一方、売り手が適正価格を下回る金額で売却してしまうと、企業の真の価値を見逃すことになり、結果的に損失を被ることになります。

適正価格を見極めるためには、詳細なデューデリジェンスが不可欠です。財務状況や市場環境、競合他社の動向などを徹底的に分析し、企業の価値を正確に評価する必要があります。

PMIに失敗する

M&Aの成功には、買収後の統合作業(ポスト・マージャー・インテグレーション)が欠かせません。しかし、PMIが適切に進まないと、シナジー効果が発揮されず、事業の成長が停滞するリスクが生じます。

売り手のリスクとして、M&A後の経営統合がスムーズに進まないと、組織の混乱や従業員のモチベーション低下を招く可能性があります。特に、企業文化の違いや経営方針の変更により、従業員の不安が高まり、優秀な人材が流出することもあるので注意が必要です。

一方、買い手のリスクとしてPMIの計画が不十分な場合、期待していた業務の効率化やコスト削減が実現せず、収益が悪化することがあります。統合プロセスが長引けば、社内の混乱が続き、事業の競争力低下につながる可能性もあります。

リスクを回避するためには、PMIの計画を事前にしっかりと策定し、実行段階でも柔軟に対応できる体制を整えることが重要です。PMIの成功は、M&A全体の成功に直結するため、十分な注意を払う必要があります。

情報漏洩が起きる

M&Aでは、企業の財務情報や契約内容、経営戦略などの機密情報が扱われるため、情報漏洩のリスクが伴います。交渉段階から適切な管理を行わないと、取引が中断するだけでなく、企業の信頼を損なう可能性もあるため、慎重に対策を講じることが重要です。

売り手のリスクとして、M&Aの交渉過程で自社の財務状況や取引先との契約内容が外部に漏れると、競争優位性が低下する可能性があります。

また、従業員や取引先に意図しない形で情報が伝わると、不安が広がり、業務の混乱や信用の低下につながることもあるため、情報管理を徹底し、秘密保持契約(NDA)を適切に運用することが重要です。

また、買い手のリスクでは、買収の意向が外部に漏れると、競合他社に先手を打たれるリスクがあります。買収後も情報管理の不備が原因で、従業員や取引先との関係が悪化しないよう、厳格な管理体制を整えることが必要です。

過去の違法行為やコンプラ違反が後から発覚する

M&Aでは、買収後に売り手企業の過去の違法行為やコンプライアンス違反が発覚するリスクがあります。

売り手のリスクとして、過去の労務問題や税務違反、法令違反がM&Aの交渉段階や買収後に発覚すると、契約の見直しや違約金の発生につながる可能性があります。

また、買収後にコンプライアンス違反が公になった場合、企業のブランド価値が低下し、取引先や顧客との信頼関係にも影響を与えることがあるため、適切な情報開示と事前のリスク対応が重要です。

一方、買収後に売り手企業の違法行為やコンプライアンス違反が判明すると、法的責任を引き継ぐことになり、経営に大きな負担がかかる可能性があるのが買い手のリスクです。

特に、未払賃金、環境規制違反、反社会的勢力との関係などが発覚すると、企業の信用を損ない、事業の継続にも影響を及ぼすため、M&A前のデューデリジェンスを徹底し、リスクを未然に防ぐことが必要です。

敵対的買収が実行される

M&Aには、友好的な合意のもとで進められるケースだけでなく、売り手の意思に反して買収が進められる「敵対的買収」のリスクもあります。

敵対的買収を仕掛けられると、経営陣の意向とは無関係に経営権が奪われる可能性があるのが売り手のリスクです。事前に買収防衛策を講じ、経営の安定性を確保することが重要です。

また、敵対的買収は、通常のM&Aに比べて交渉が難航し、時間とコストがかかるのが特徴です。買い手のリスクとして、買収後に売り手側の経営陣や従業員の協力が得られないと、組織の統合が円滑に進まず、期待したシナジーを実現できない可能性があります。

企業文化や経営戦略の違いを慎重に分析し、買収後の統合計画を入念に準備することが重要です。

M&Aのリスクを回避する方法(売り手と買い手それぞれ紹介)

M&Aにおけるリスクを回避するためには、事前の準備と適切な対策が不可欠です。

  1. 各種デューデリジェンスを行う
  2. M&A支援の専門会社へ相談する
  3. M&A後の統合計画を綿密に策定

事前に明確なビジョンと具体的な行動計画を持ち、M&Aの目的を達成するための基盤を整えていきましょう。

各種デューデリジェンスを行う|財務・法務・税務・ビジネスDD

M&Aにおけるリスクを回避するためには、各種デューデリジェンスを徹底的に行うことが不可欠です。デューデリジェンスとは、買収対象企業の詳細な調査を行い、潜在的なリスクや価値を評価するプロセスを指します。

売り手にとっては、デューデリジェンスの過程で財務状況や契約関係を正しく開示しなければなりません。未解決の法的問題や税務リスクがある場合、M&Aの交渉が難航するだけでなく、売却価格にも影響を与える可能性があります。

一方で、買い手は売り手の事業の実態を正確に把握することが不可欠です。財務DDでは負債やキャッシュフローの健全性を確認し、法務DDでは契約のリスクやコンプライアンス状況を精査することが重要です。

総合的に行うことでM&Aの成功確率を高め、買収後の経営リスクを最小限に抑えられるでしょう。

M&A支援の専門会社へ相談する

M&Aを成功させるためには、専門的な知識と経験が不可欠です。特に、売り手と買い手の双方が直面するリスクを適切に評価し、対策を講じるためにはM&A支援の専門会社に相談することが有効です。

売却を検討する場合、適正な企業価値の算出や買い手候補の選定、交渉の進め方など、多くのプロセスで専門的なサポートが必要です。財務状況の整理や法務リスクの洗い出しを事前に行うことで、スムーズな取引につながります。

一方で、買収を進める際には、相手企業の財務や契約関係の精査、交渉戦略の立案、買収後の統合計画の策定などが求められます。特に、デューデリジェンスを徹底し、潜在的なリスクを見極めることが不可欠です。

M&A支援の専門会社は、こうした課題を総合的にサポートし、売り手・買い手双方にとって最適な取引を実現する役割を果たします。経験豊富な専門家の助言を活用することで、リスクを抑えながら、M&Aを成功へと導いてくれるでしょう。

M&A後の統合計画を綿密に策定

M&Aの成功には、買収後の統合計画(PMI)が極めて重要です。

統合計画が不十分であると、企業文化の違いや業務プロセスの不整合が生じ、従業員の士気低下や顧客離れを引き起こす可能性があるため、M&A支援の専門会社へ相談し、適切なアドバイスを受けることが有効な手段となります。

売却を進める際には、経営陣や従業員が買収後も安心して業務を続けられるよう、情報共有や説明を徹底することが重要です。企業文化や業務フローの違いを事前に整理し、統合後の環境変化に備えることがスムーズな移行につながります。

一方で、買収する側は組織や人事制度の調整、業務プロセスの統一、ITシステムの連携など、多岐にわたる課題を計画的に進める必要があります。特に、幹部やキーパーソンの役割を明確にし、従業員の不安を取り除くことが重要です。

M&Aの目的を達成するためには、単なる契約の締結だけでなく、統合後の経営戦略まで見据えた計画を策定し、段階的に実行することが不可欠です。

M&Aのリスクについてよくある質問 

M&Aに関するリスクについては、多くの企業が疑問を抱いています。

  1. M&Aはリスクが大きいですか?
  2. M&Aは1人で行わない方がいいですか?
  3. M&Aのリスクはどこまで考慮すればいいですか?

よくある質問の回答を示して、M&Aのリスクについての疑問を解消していくサポートをしていきます。

Q1:M&Aはリスクが大きいですか?

M&A(合併・買収)は、企業の成長戦略として魅力的な手段ですが、その一方でリスクも大きいと言えます。

特に、M&Aのプロセスには多くの不確実性が伴い、売り手と買い手の双方にとって様々なリスク要因が存在します。例えば、適正価格の判断ミスや、統合後のシナジー効果が期待通りに現れない場合、企業の財務状況に深刻な影響を及ぼす可能性があるので注意が必要です。

M&Aはリスクが大きいと考えられますが、適切な準備や対策を講じることで、リスクの軽減も期待できます。デューデリジェンスの徹底や専門家の活用、統合計画の策定などを通じて、リスクを管理し、成功に導くための道筋を築くことが重要です。

Q2:M&Aは1人で行わない方がいいですか?

M&A(合併・買収)は多くの専門知識や経験が求められるため、M&Aを1人で行うことはリスクが高いと言えます。

特に、経営戦略や財務、法務、組織・人事など、さまざまな分野において専門的な知識が必要です。1人の判断だけでは見落としや誤解が生じる可能性が高く、結果としてM&Aの成功を妨げる要因となります。

また、M&Aは多くのステークホルダーが関与するプロセスであり、売り手と買い手の双方が納得できる条件を見つけることが重要です。このため、複数の視点からの意見やアドバイスを受けることが、より良い意思決定につながるでしょう。

Q3:M&Aのリスクはどこまで考慮すればいいですか?

M&Aにおけるリスクを考慮する際には、単に数値的な評価や過去の実績だけでなく、さまざまな要因を総合的に判断することが重要です。

まず、経営戦略や市場環境の変化を踏まえた上で、リスクの特定と評価を行う必要があります。特に、売り手と買い手の立場によってリスクの捉え方が異なるため、それぞれの視点からリスクを分析することが求められます。

具体的には、財務リスクや法務リスク、組織・人事的なリスクなど、各種のリスクを洗い出し、それぞれの影響度や発生確率を評価します。また、リスクの影響を最小限に抑えるための対策を事前に講じることも不可欠です。

さらに、M&Aのリスクは静的なものではなく、時間の経過とともに変化する可能性があるため、定期的な見直しも重要です。市場の動向や競合の状況、法規制の変更など、外部環境の変化に応じてリスク評価を更新し、柔軟に対応する姿勢が求められます。

適切なリスク管理を行うことで、M&Aの成功確率を高められるでしょう。

まとめ

M&Aは企業の成長戦略として有効な手段ですが、成功には多くのリスクが伴います。売り手と買い手の双方が直面するリスクを理解し、適切な対策を講じることが重要です。

本記事では、M&Aにおけるリスクの種類や実際に起こりやすい問題、回避するための方法について詳しく解説しました。デューデリジェンスの実施や専門家の活用、統合計画の策定は、リスクを軽減し、M&Aを成功に導くための重要なステップです。

M&Aのリスクに関する知識を活かし、成功させるための一助となれば幸いです。