2026年9月は、スタートアップのIPOが4社、成長企業に関わる注目のM&Aが相次いだ月でした。同じ月に上場した4社でも、株主構成や売出しの設計によって初値の結果は大きく分かれています。M&Aでは、上場企業の非公開化、上場企業の完全子会社化、未上場スタートアップによる買収と、IPOの「前」と「後」の両方でM&Aが使われています。
本記事では、各社の適時開示・有価証券届出書・プレスリリースをもとに、ファイナンス・プロデュース(FiP)が要点と起業家にとっての示唆を整理します。
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上場日 |
会社 |
市場 |
公開価格 |
初値 |
騰落率 |
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9月11日 |
KOMPEITO |
東証グロース |
1,600円 |
1,480円 |
−7.5% |
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9月16日 |
オーディオストック |
東証グロース |
1,060円 |
1,554円 |
+46.6% |
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9月17日 |
Skyfall |
東証グロース |
1,500円 |
1,760円 |
+17.3% |
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9月18日 |
akippa |
東証スタンダード |
570円 |
1,244円 |
+118.2% |
オフィスに冷蔵庫を置く設置型健康社食「OFFICE DE YASAI」を展開しています。本契約社数は6,644社(2026年5月末)で、月次のサブスクリプション売上は69か月連続で増収、月次解約率は1.1%です。2026年8月期は第3四半期累計で黒字化しました。2026年4月には、食事補助の非課税枠が月3,500円から7,500円へと42年ぶりに引き上げられ、事業の追い風になっています。
公開株式の約99%が既存株主による売出し(オーバーアロットメントを含む)という構成で、初値は公開価格を7.5%下回りました。一方、上場初日の終値は1,670円で、公開価格を上回っています。
BGM・効果音・ボイス/ナレーションなど、100万点を超える音源を扱うプラットフォームです。収益は、利用者から受け取るライセンス料と、JASRAC・NexToneなどの著作権等管理事業者を通じて分配される著作権使用料の二本立てです。音源を一度売って終わりにせず、使われるたびに対価が生まれる構造を持つ点が特徴です。
主力の「SKYFLAG」は、ユーザーがアプリ内の深い到達点に達したときに初めて広告費が発生する、ロングCPE型のリワード広告です。売上高は2021年9月期から2025年9月期までCAGR(年平均成長率)41.4%で伸び、2025年9月期は約162億円に達しました。株主は創業者・役員等が中心でVCの出資はなく、外部資本に頼らず自己資金で成長する「ソリッドベンチャー」型のIPOです。2025年に韓国でサービスを始め、今後は米国・欧州への展開も計画しています。
駐車場シェアリングの大手です。スタートアップのIPOではグロース市場が一般的な中、スタンダード市場を選びました。上場後は、中小の駐車場事業者を買収して束ねるロールアップ型のM&Aを成長の柱とし、数年以内に国内売上高500億円を目指すとしています(上場時の代表者発言)。株主はSOMPOホールディングス・DeNA・住友商事など事業会社が中心です。
akippaは、上場企業としての信用力と株式を使って非連続に伸びる「M&A前提のIPO」を掲げています。また、VCを入れずに上場したSkyfall、事業会社の株主に支えられたakippa、売出し比率が高かったKOMPEITOと、株主構成と売出しの設計の違いが初値に表れました。IPOを目指す起業家にとっては、誰から資金を受け入れ、上場時にどれだけの株式を市場に出すかという資本政策が、上場後の評価まで左右することを示す月だったといえます。
「暮らしのお困りごと」の解決を仲介するマッチングプラットフォーム「生活110番」を運営する東証グロース上場企業です。2026年9月9日、MBKパートナーズがサービスを提供するファンドが出資するMP-2606株式会社によるTOB(株式公開買付け)に賛同し、株主に応募を推奨すると表明しました。
成立すれば、スクイーズアウト(少数株主から株式を取得する手続き)を経て完全子会社化・上場廃止となる見込みです。経営陣の出資はなく、MBO(経営陣による買収)ではありません。PEファンド14社・事業会社5社に打診した会社主導の入札を経ており、検索アルゴリズムの変化や生成AI検索の台頭を受けた集客モデルの転換のために、非公開化を選んだ事例です。
DX・AIコンサルティングを手がける東証グロース上場企業です。2026年9月28日、テクノプロ・ホールディングス(Blackstone傘下)の100%子会社TX1によるTOBに賛同し、株主に応募を推奨すると表明しました。
買い手はプロジェクトHDの提案営業力とBPR(業務プロセスの見直し)/PMO(プロジェクト管理支援)の能力を評価し、プロジェクトHD側はテクノプログループの顧客基盤を活かした新規顧客の獲得や案件規模の拡大、技術者約30,000名からのリファラル採用などを見込んでいます。
不動産仲介会社向けのコミュニケーションクラウド「Facilo」(導入2,300店舗・営業担当者13,000名超)を運営する未上場スタートアップです。2026年9月17日、AI査定サービス「HowMa」「AI査定プロ」を提供するコラビットのグループ会社化と、シリーズBでの総額64億円の資金調達を同時に発表しました。
売却仲介の業務を一つのプラットフォームで完結させる狙いで、今後もシナジーの見込める領域でM&Aを積極的に検討するとしています。
今月は「上場=ゴール」ではないことを示す案件が並びました。シェアリングテクノロジーは集客モデルの転換のために非公開化を選び、プロジェクトHDは株価が伸び悩む中でも、人材と顧客基盤を求める事業会社から市場株価の約2倍の評価を得ました。一方、未上場のFaciloはシリーズBの調達と同時にM&Aを実行し、「調達した資金で買って伸ばす」成長戦略を打ち出しています。
当社にも、資金調達とM&Aを一体で設計したいというご相談が増えています。IPOかM&Aかの二択ではなく、上場の前後を通じて「どの資本を、どの順番で使うか」を早めに描いておくことが、成長と出口の選択肢を広げます。
開示では、公表前日の終値に加えて、1か月・3か月・6か月の平均株価に対するプレミアムが示されるのが一般的です。シェアリングテクノロジーのように、公表前に憶測報道などで株価が動いた場合は、報道前の株価を基準にした数値も併記されます。どの時点を基準にするかで数値が大きく変わるため、基準日とあわせて確認することが大切です。
調達資金の使い道が具体的になり、投資家に成長の道筋を示しやすくなる点です。Faciloのように、買収先のプロダクトを自社のプラットフォームに組み込む計画とセットで調達すると、単独で開発するよりも早く提供範囲を広げられます。
ファイナンス・プロデュースは、スタートアップ・成長企業に特化したFA(財務アドバイザー)です。M&Aによるイグジットや買収、資金調達の設計について、お気軽にご相談ください。
お問い合わせ:https://finance-produce.com
※初値は各社の上場日の取引結果によります。本記事は情報提供を目的としたもので、特定銘柄の売買やTOBへの応募を推奨するものではありません。
株式会社ファイナンス・プロデュース
「社会を変える事業を創るためのファイナンスをプロデュースする。」というミッションのもと、ドリームインキュベータから新規事業カーブアウト・MBO(マネジメント・バイアウト)を実行して誕生した、スタートアップ起業家専門の投資銀行事業を行う会社です。
特に、日本のスタートアップ業界のボトルネックとも言える、" スタートアップM&Aの規模化と質の向上 "を中核テーマとして、主にシリーズB以降等のグロース・ステージのスタートアップ起業家側のセルサイドFA(Financial Adviser)としてのM&A助言や、大型IPOに向けた資本政策・資金調達の助言事業を展開しております。